クリンチングファスナー最大のトラブル要因


運営;クリンチングファスナー普及委員会
スポンサー;株式会社ユーロテック
クリンチングファスナーの硬度 剥離再めっきはやめて

クリンチングファスナー最大のトラブル要因

このホーム・ページは、クリンチングファスナーを使用される板金設計者の皆さんの利便性を追及するという目的があります。 そこで、ここからのページは、板金図面を作成する時に、 どのような内容に気を配れば、不具合の発生を減少させる事が可能なのかを、 解説します。

クリンチングファスナーの不具合要因には、様々なものがありますが、 最初に述べるのは、最も重要な不具合要因です。

クリンチングファスナーを使用する以上は、設計者の皆さんには、 基本的な事として、 どんな加工機でファスナーを圧入しているのかを把握 して頂く必要があります。 これを理解していなければ、不具合が発生しても対応策が解らないでしょうし、 板金屋さんの言っている事も理解できないからです。

クリンチングファスナーを 圧入あつにゅう するには幾つかの方法があります。 しかし、結局のところ、きちんとしたインサーション・マシンで圧入しなければ、 圧入不具合が “ 確実 ” に発生します。 板金製品の製造コストの問題もありますので、 絶対に、インサーション・マシンでなければダメとは申し上げませんが、 1つの不具合も許されないようなお立場であれば、 インサーション・マシン以外の方法では、 確実に不具合が発生すると申し上げる他はありません。

その理由は、クリンチングファスナー圧入時の 塑性変形そせいへんけい は、 非常に微細であり、従来の 塑性加工そせいかこう では考慮するに値しない
0.01mmレベルの板厚の差が、圧入品質に影響を与える からです。 結果的に、インサーション・マシン以外の方法では、 板厚が0.01mm薄くなれば、圧入が甘くなりますし、 逆に厚くなれば、 ひず み等が大きくなります。 運が悪ければ、クリンチングファスナーが板から外れる事になったり、 クリンチングファスナーが割れる事もあります。

プレスの基本機構

一般にプレス は、上下運動するラム機構を持ち、 取り付けた金型が、上下運動を繰り返します。 この上下運動が一番下に移動した時の位置を 下死点かしてん と呼びます。 プレス機は、この 下死点かしてん までの範囲を利用して加工を行うものであり、 例えば、10tonのプレスとは言っても、10tonの荷重が掛る事は、ほとんどありません。 もしも、下死点より上に物体が存在すれば、 全力でラムにパワーを伝達し、下死点まで下げようとします。 つまり、プレスは“ この位置まで下げろ! ” という考え方の制御であり、言わば『 位置制御 』なのです。 しかし、この機構でクリンチングファスナーを圧入しようとした時には、 板厚の違いを無視した圧入しか出来ません。  板厚が薄かろうと厚かろうと、前もって設定された下死点位置までクリンチングファスナーの ヘッドを押してしまいます。 板厚が厚ければ大きな力で、薄ければ小さな力で加圧する事になりますから、 クリンチングファスナーの圧入を行う場合、加圧力は毎回デタラメ な値となります。

プレスでクリンチングファスナーの圧入を行っていると、 下図に示すような圧入不具合が発生します。

これらの不具合は、人間が感じるレベルでは、
    ① クリンチングファスナーが外れた
    ② 製品に りが発生した
    ③ クリンチングファスナーが割れた
という現象で現れてきます。そして板金屋さんは必ず、

    “これまで、ずっときちんと圧入できていたのに突然不具合が出た!”
    “だから、クリンチングファスナーの品質に問題がある!”

と言います。ですが、ここまでで述べて来た理由が理解出来ていれば、 突如として不具合が発生するのは、当り前の事 です。
筆者の経験から申し上げますと、一般的なプレスやプレスブレーキで、クリンチングファスナーの圧入を 行っていると、大きな不具合(外れる、割れる)は、10万回に一回ほどの割合で発生します。 ですが、詳細に圧入後の試験を行った場合は、10回に一回ほどの割合、場合によってはそれ以上の割合で、 カタログに示された耐力を持っていない製品が出荷されているものと思われます。
設計者の皆さん。これじゃぁ、全然ダメですよね?


この問題の解決方法

この 『 位置制御 』 に対して 『 圧力制御 』 という方法があります。 『 圧力制御 』 は、一定の圧力になるまで下に動くという制御方法です。 そのため 『 圧力制御 』 には下死点が無く、 クリンチングファスナーを圧入するための適正加圧力になるまで、ツールが下がる よう設計されています。 この機構により、板厚に微妙な差があっても確実にクリンチングファスナーを正しく圧入する事ができるわけです。 下記のようなインサーション・マシンは 『 圧力制御 』 を行う事が出来るので、ここまでで述べて来た圧入不具合は発生しません。
インサーション・マシンには、実に沢山のメリットがありますが、それは、後で述べる事とします。
最新鋭インサーション・マシン ㈱ユーロテック社殿御提供
㈱ユーロテック社では、インサーション・マシンとクリンチングファスナーの両方を取り扱っておられます。 ここまでで説明した類の不具合(プレスを使用した圧入)に関しては、 クリンチングファスナー側の問題ではないという認識で顧客への説明を行っているそうですが、 まだまだ理解できていない板金屋さんは多いのだそうです。


板金屋さんの実状

論外ではありますが 『 蹴飛けと ばし 』 を使って クリンチングファスナーを圧入されている板金屋さんすらも、 まだまだおられます。(概ね30%くらい)

注文も来ないのに、高価なインサーション・マシンを導入するという経営判断はありえません。 少ない量のクリンチングファスナーの圧入仕事しか受注していない段階においては、 “ この方法では、確実に圧入不具合が発生する ” という事を、はっきりと把握されていれば、 それで良いのかも知れません。
例えば、圧入後に念入りにチェック等をされるというのであれば、 これを完全否定する事は出来ないようにも思いますが、 現実には、圧入後の念入りなチェックをしておられる板金屋さんに巡り合った事はありません。

現実には下記のような事情によって、 クリンチングファスナー圧入の仕事は、不適切な状況に陥り易い環境にあります。 具体的に言うと、 設計者の前に現れる板金屋さんは、いつだって加工の注文が欲しいと考えています。 でも、それは自分達が持っている機械を使って加工が出来る事が前提です。 自分達の工場の設備としてインサーション・マシンを持っていない板金屋さんが、 設計者の皆さんに “クリンチングファスナーの圧入って出来ますか?” と聞かれた時の答えは、 ほぼ、100%が下記の台詞となります。

しかし、ここまでで述べて来た通り、そのような事はありえません。
板金屋さん自身もクリンチングファスナーの事を誤解しているのです。

さらに、付け加えますと、 カタログには各クリンチングファスナーの適正加圧力が明記してあります。



この値は、『 最低加圧力 』 ではありません。 この値よりも、大きくても小さくても、いけない のです。 そうなると、 『 蹴飛ばし 』 や『 プレスブレーキ 』 では、全く制御できないはずです。
筆者は、板金屋さんが、クリンチングファスナーのカタログに書いてある適正加圧力を見ながら
うちは、こんな値よりもずっと大きな力で加圧できるプレスがあるから
という発言をされているのを聞いた事もありますが、 それはもう全く上記の内容を理解されていないと言える発言です。

クリンチングファスナーの圧入の情報を持っておられない設計者の皆さんの中には、 大量のクリンチングファスナーの圧入を、 このように勘違いした板金屋さんに発注してしまうケースが多々見受けられます。 現在、クリンチングファスナーの圧入を行っている 日本の板金屋さんの中で、間違った圧入を行っている板金屋さんは、何と半数以上にも達します。 これらは、大量の不具合の時限爆弾となっているのです。(お~怖)
不具合を恐れるのであれば、まず、第一に
インサーション・マシンを持っていない板金屋さんには、
クリンチングファスナーの仕事を発注すべきではありません。
関連ページ:
インサーションマシン1 圧力制御

クリンチングファスナーの硬度 剥離再めっきはやめて