磁界リング式(SRM)スタッド溶接 まとめ


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磁界リング式(SRM)スタッド溶接 まとめ

筆者は、軽量の板金製品においては、過去10年間は、 スタッド溶接にアドバンテージは無かったと考えています。 クリンチング・ファスナーの登場前に、図面にスタッド溶接工法が 記入されていたケースと、 クリンチング・ファスナー圧入設備を投資する事が出来なかったので、 昔のままの工法を使い続けたケースを除けば、 軽量の板金製品にスタッド溶接を使う理由は、 ほぼ無かったはずです。
しかし、今回の 磁界じかい リング式(SRM)スタッド 溶接工法ようせつこうほう の登場は、 スタッド溶接の適用範囲を大幅に広げる事になりました。 磁気吹きじきぶき が無くなるという事は、単に、技術的な側面に過ぎないでしょう。 不具合が減って品質管理者が喜ぶだけの事に過ぎません。 しかし、 磁気吹きじきぶき が無くなるという事の本当の意味は、あまりにも大きく、 その意味を正確に把握して頂きたく存じます。

  ● 設計者にとっては、どんな場所にでもスタッドが立てられる という意味になります。
  ● 生産者にとっては、製品の固定やアース位置に関する苦労が無くなる という事です。
  ● 経営者にとっては、スタッド溶接技術を使った製品が増えて売上が伸びる という事です。
磁界じかい リング式(SRM)スタッド 溶接工法ようせつこうほう の登場は、 日本のものづくりにも大きな影響を与える事になります。


一番、解り易いのは、防衛機器です。 この分野の是非について、ここで申し述べる事は差し控えますが、 防衛機器で開発された技術が民需で開花するというのは工業技術の常識です。

確かに、溶接技術や 塑性加工そせいかこう 技術で生産できる金属製品の全ては、 機械加工で生産できます。しかし、防衛機器もまた安価でなければなりません。 安価で優れた防衛機器を作る事は、国力の増強に繋がります。 磁界じかい リング式(SRM)スタッド 溶接工法ようせつこうほう によって、防衛機器のレベルはアップします。

高強度で複数の金属製品を組み立てる事ができるという事は、 防衛機器の軽量/小型化に結びつきます。 防衛機器にとって軽量/小型化は、生命線です。 飛行物体は航続距離が延びますし、車両や船舶も、実質的な積載量の増加を意味します。 ボルトやナットを金属製品にパンパン付けられるとすれば、 野営地の設置などにも強力な威力を発揮する事でしょう。

防衛機器への応用を考えた時、 磁界じかい リング式(SRM)スタッド 溶接工法ようせつこうほう の優位性が大きく感じられるという事は、 民需においても、それだけ大きな効力が期待できるという事です。

磁界じかい リング式(SRM)スタッド 溶接工法ようせつこうほう を使いこなせば、 これまで考えも及ばなかった新しい金属製品が生まれて来るでしょう。 様々な分野への応用を期待してやみません。


私のSRM論 - 技術者向け -

溶接技術を勉強しておられる方にとって、 磁界の制御を行いながらスタッド溶接を行うSRM工法は、 気になる存在であるはずです。 それは、ドイツの溶接技術が、 どういったレベルにあるのかを知る事ができる装置だからです。 ドイツの技術情報は、非常に進んでいる事は知られていても、いつも、 ドイツ語の最新技術情報は把握できていないと言っても良いでしょう。

筆者は、Soyer社の最新技術を把握しようと 様々な問合わせを、過去10年に渡って行って来ましたが、残念ながら、 肝心な部分の情報を教えてもらうには至っておりません。

SRMは、ドイツでは10年前に既に商品化された技術でした。 日本では、400V電源をドイツのように日常的に使う事が出来なかった事から、 初期のSRM機器が日本の金属製品製造業に導入される事は、ほぼ無かったのです。

今回、発表されたBMK-8iにおいては、200V電源でも動作する仕様となっており、 これによって日本でもSRMニーズが急速に高まるものと期待が膨らみます。

ところで、SRMとスタッド溶接技術には、どんな未来が待っているのでしょうか?  ドイツでは日本よりも、この方面の技術が進んでいる 事は、技術者ならば誰でも気付くはず。 特に薄板板金の世界に与える影響が気になるところです。

少ししか得られていない Soyer社の情報を集めてみると、実は2つの方向性が見えてきます。

1つ目 は、溶接スタッドのチップの問題です。 溶接スタッドの生産コストの多くの部分は、 溶接時に溶融するチップのコストであると言っても過言ではないでしょう。 回転体の中央に長さ1mm、直径1mm程度の、いわば削り残しを残して、 製品化するのは骨の折れる仕事です。 もしも、これが無くても溶接品質に変わりが無ければ、 溶接スタッドのコストは、単なる「ねじ」と同じコストとなる事でしょう。

これまでのCDスタッド溶接ならばいざしらず、 SRMに至っても、なお、この面倒なチップというものは必要なのでしょうか?  SRMの開発チームは、数年以内に No と答えるのではないかと予測します。

2つ目 は異種金属のスタッド溶接の問題です。 異種金属の溶接は、アーク溶接では不可能と言われていますが、 圧接では可能であると言われて久しいのです。 スタッド溶接は、前半はアーク溶接ですが、後半は、圧接を行うようになっています。 種々の異種金属溶接の現状を見てゆくと、 スタッド溶接の後半部分に工夫を加える事で、 異種金属のスタッド溶接が可能になっても何ら不思議はありません。 また、SRMの開発は、当初から、異種金属のスタッド溶接を視野に入れたものとなっていたと記憶しています。

そして、Soyer社は、これらの技術を主に民需用ではなく、軍事用として開発を進めて来た企業です。 水面下で開発が進んでいないと考える方が不自然です。

ところで、ここまでは、ドイツ方面の情報でしたが、 どんどん開発が進んでいるドイツと比較して、 日本の薄板板金におけるスタッド溶接技術は、 ここ数年、目新しい開発例が見当たりません。

それは、輸入業としての側面も持つ㈱ユーロテックにとっては、 都合の良い事かも知れませんが、 日本という国の金属製品製造業の将来を考えた時には、如何なものか?と申し上げる他はありません。 ですが、これは、何処かの企業がいけないという話ではなく、 日本全体の「ものづくり」の雰囲気の問題であるように思います。

日本におけるSRMに類する技術は、数件の開発事例を確認するに至りましたが、 何れも、スタッド溶接とは関係は無く、 薄板板金方面の技術として開発しようとするものでもありませんでした。

つまり、先行き10年は、日本の薄板スタッド溶接技術は、 ドイツ、Soyer社を含む海外の技術を、如何に上手に使いこなすかが問われるという事です。 これを、日本人として残念に感じるのは筆者だけでしょうか?

世界では、きっと、チップの無いスタッドでも溶接できたり、 異種金属でも溶接できるようになってゆくのに、 日本は、そういった事に、まだ、気付いていないように思えてなりません。 日本に向けてリリースされる機器や提案されている工法は、 本当の最新技術ではないはず。 それでいて、これだけの差があるとすると、 真の技術力の差が気になってしまいます。 これがスタッド溶接分野のみに限った話なのであればよろしいのですが。

2019年10月 クリンチング・ファスナー普及委員会 
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