磁気吹きが設計に及ぼす影響


運営;クリンチングファスナー普及委員会
スポンサー;株式会社ユーロテック
スタッド・チェッカー SRMスタッド溶接

磁気吹きが設計に及ぼす影響

スタッド溶接は、大きく 磁気吹きじきぶき の影響を受けます。 そのために、設計者は設計時に下記の事に注意を払わねばなりません。

1. 個々の金属部品の中でスタッド溶接が可能な位置と不可能な位置が存在する

これまで設計する事が出来なかった形状の例は以下の様なものです。

例外として板金屋さんが独自の工夫をしておられる場合は、 上記形状でも生産可能な場合はありますが、一般的には生産不可能か、 不具合品が続出する事になります。 この様な、何処にでもある単純な形であっても生産現場に問合わせないと、 設計出来ないという事にショックを受ける設計者の方も多いはずです。

2.板金屋さんにスタッド溶接の可/不可を聞いても 板金屋毎に答えが異なる。

4.磁気吹きの従来対策 で述べたような工夫をする事によって、 磁気吹きを抑える事が出来ている板金屋さんがおられます。 しかし、そんな板金屋さんに限って、甘くは考えておられない事が多く “やってみないと解らない” という答えが帰って来るものと思われます。

一番、やっかいなのは “ 磁気吹きじきぶき ” の事を何も知らずに、図面を見て、 “出来ると聞いています” などという無責任な台詞が飛んでくる事が多いという事でしょう。 そんな場合は “どんな 磁気吹きじきぶき 対策を行うのですか?” と聞けば良いと思います。

設計者の方には、ここで、悲劇が起こり易いという点にご注意頂きたいと思います。 2つの板金屋さんの答えが “解らない” と “出来ると聞いている” に分かれた時、 あなたは、どちらの板金屋さんに仕事を任せますか?  “出来ると聞いている” という板金屋さんを信用して、ヒドイ目に遭っている設計者が多いという点にご注意頂きたく思います。

3. スタッド溶接部品の明確な検査方法が無い。(全部破壊検査)

板金屋さんは、5.スタッド・チェッカー を持っていなければ、左画像のような破壊検査しか出来ません。 なので設計者の方は、まず “スタッド・チェッカーを持ってますか?” と聞くべきです。 同種の検査機器は、唯一スタッド・チェッカーしか存在しません から、 ここで、もし、板金屋さんがスタッド・チェッカーを知らなければ、 不具合の流出対策がされていないという事になります。

また、スタッド・チェッカーを持っていれば良いというものでは無く、 何%のスタッドをスタッド・チェッカーで検査していますか? と聞くべきです。 スタッド・チェッカーを使って、溶接不具合を検査するのは非常に手間の掛る仕事ですから、 多い方が良いという事は言えても、 ここで筆者が、何%の検査をすべきであるとは申し上げられません。 ですが1つだけ言えるのは、板金屋さん自身がスタッド溶接の不具合に対する恐怖感を 強く感じておられますので、何処の板金屋さんであっても、スタッド・チェカーを御存じなくても、 早急にスタッド・チェッカーを用意して、改善に努めようとされるはずです。 つまり、スタッド・チェッカー云々の会話をするだけでも不具合対策は良い方向に向かいます。

4. ほとんどの板金屋には溶接に関する知識が無く、溶接条件管理が無理

このような事を述べると、板金屋さんにしかられる可能性もあります。 失礼な内容であるとは重々承知の上ながら、 筆者は残念ながら E=IR(オームの法則)をご存知の板金屋さんに、ほとんど会った事がありません。 スタッド溶接だけでなく、スポット溶接や、多くのアーク溶接を行おうとされる前に、 最低限でも E=IR は御存じないと溶接条件管理は不可能です。

それでも、スタッド溶接を行っておられる多くの板金屋さんは、 経験と勘だけで不具合問題などを解決して来られました。 しかし、理屈が見えていなければ解決には時間が必要となり、不具合が再発する可能性も高くなります。 溶接機の設定を何十年も変えた事が無いという板金屋さんが案外多いのには驚かされます。

E=IR が解っていないという事だけを述べても仕方が無いので、少々説明を加えたいと思います。 金属に電気が流れる時、電気が流れる量は電子の粒が流れる数という事になります。 電子の粒の速度がI、すなわち電流です。これを言い替えると、道路に車が走っている時の 車の速度(時速××キロ)と同じ事です。ところで車が走っている時に車は、少なからず抵抗力を受けます。 前方からの風とか、路面からの 摩擦抵抗まさつていこう とかです。これを電気の世界では 電気抵抗でんきていこう と言ってRで表しています。

車は、抵抗が凄く大きい時、そこそこの速度しか出せませんね。 でも、アクセルを踏むと車のパワーが大きくなって、スピードも上がります。 Eは、この場合の車のパワーの事で、電気の世界では電圧と呼んでいます。 E=IR は、車で言うと、スピードと空気など抵抗を掛け算したら、車の馬力になるという式なのです。

数式というのは有難いもので、この3つの E と I と R のうち、どれか1つが解らなくても、残りの2つさえ解っていれば、 解らない1つも解るわけですが、他の意味にも解釈できます。  例えば、空気抵抗が大きい時、それでも車の速度を上げたい時は、アクセルを踏んで 馬力ばりき を上げれば良いという事になります。 これと同じで、 R(抵抗)が大きい空気中にアークを発生させるためには、 大きな電圧が必要だ という事に結びつきます。

この話を進めればキリがありません。 多くの、板金屋さんの皆さんには“ E=IR って結構重要じゃん” という事だけ覚えておいて頂き、必要になった時に思い出して勉強して頂きたく思います。 このHPでは、 E=IR が解っていなくてもスタッド溶接と 磁気吹きじきぶき が理解できるように 解説を行っています。

5. 不具合原因が常にはっきりしない。

これまでに発生した不具合の原因が、 はっきりしなくて困ったという御経験をお持ちの設計者の方も多いと思います。 ほとんどの理由は、磁気吹きを御存じ無く、設計者を含む関係者の皆さんがお立場を守ろうとされているからです。 設計者も板金屋さんも、自分のミスでは無いと言いたいのです。 ㈱ユーロテックでは、明らかに自分の会社のミスでは無いのに、 板金屋さんのお立場を守るため、自分の会社のミスであった旨の書類を書いた事が何度もあります。

スタッド・メーカーには、クレーム処理をする専門の人がいますが、 クレームの半分以上が磁気吹き関連の内容です。 多くの場合、本当の原因は『設計ミスによって発生した磁気吹き』ですが、 そのように書類に記載すると、設計者の不勉強が露呈しますので、 板金屋さんに“丸く収まるように書いて欲しい”と要望される事も多いのが実情です。

本当は、 磁気吹きじきぶき にも色々なパターンがあって、 その中の、どのタイプなのかを明確にし是正すべきところです。 ですが、設計者と板金屋さんが、 磁気吹きじきぶき という言葉すらご存知ない場合が多く、 結果的に『不具合原因が常にはっきりしない』という状況になってしまうのです。

ここまでは、過去の常識

2017年2月以前は、ここまでのページで述べて来た事が、 板金屋さんと設計者の皆さんのスタッド溶接の、いわば裏の常識でした。 多くの内容、特に 磁気吹きじきぶき を抑える方法などは、企業秘密とされ、 書籍、ホームページにも、ほぼ、掲載された事がありませんでした。

しかし、今、秘密にしていても意味が無くなるような出来事が起こったのです。 あれだけ皆を苦しめていた 磁気吹きじきぶき だったはずなのに、 何と、磁気吹きじきぶき の無いスタッド溶接工法が開発されて、商品化され、発売されてしまったのです。 これによって、板金屋さんにおけるスタッド溶接工法は、 全く違ったものに変わってしまうでしょう。 次ページ からは、新しい磁気吹きの無いスタッド溶接方法について、詳細に説明します。

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