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43.“プレスする”と書いてあるクリンチング・ファスナー・カタログ

多くのクリンチング・ファスナーのカタログやホームページには クリンチング・ファスナーを板に“プレスする”と書いてあります。  なので誰でも、プレスを使って 圧入あつにゅう 出来るのでは?と思ってしまいます。

しかし、その表記は間違いです。 しかも、かなり罪深い。
最初に“プレスする”と書き込んだ方は、 加圧かあつ する” と “プレスする”を同じ意味だと思った のでしょう。

このようなカタログを見た人が、プレス加工機が使えると解釈してしまうと、 カタログの同じページに、プレスでは 出来るはずのない 加圧力制御用かあつりょくせいぎょよう の数値が指定されている ので 両者が大矛盾となって理解不能となるでしょう。

加圧力制御用の数値を見た、多くの方は
   “ これは最大加圧力だな ”
と勘違いし
   “ それなら、うちのプレスは10tonだから大丈夫だ ”
と思ってしまいます。
この解釈は、全く間違った解釈なのですが、 実際にはそのように考えてしまう人の方が多いようです。  それどころか、カタログを作ってクリンチング・ファスナーを販売しているメーカー自身ですら、 このような勘違いをしているとしか思えません。

これは、結局のところ最初に、これらのカタログを作成した人の PRESS という英単語の 翻訳ミスです。  普通の英語の先生ならば○を付ける場合もあるのかも知れませんが、加工を専門とする先生は×を付けます。  英語をしっかり勉強した人ほど専門分野の翻訳が難しいと言います。  これは、そういった中でも典型的な例です。  英語を勉強している人ならば、加工技術等に無縁の方でも、 良い例ですので皆覚えておいた方が良いと思います。  少なくとも “ 加圧する ” と書いていたとすれば、文句の付けようは無いのですが、 これを“プレスする”と書き込んでしまった事で、 プレスを使って、問題無く板に取り付ける事が出来るかのように誤解されてしまった のです。

おまけに、それ以降、同種のカタログを作った人達が、 よく考えずに、最初に翻訳したカタログを参考にしたために、 各社で、同じコピペが繰り返されてしまいました。

加工の専門家は “ プレスする ” という表現を 公式な論文/書類/説明書等で使う事はありません。  何故ならば、新聞業界などで使われる『 印刷 出版 新聞 』という意味を含んでしまうので、 適切な言葉では無いと判断するからです。  加工の専門家の間で “ プレス ” は、 動詞としては使われず名詞としてしか使われません。  これは会話や書類の上で勘違いや聞き違いを無くすために必然的に行われている事です。  実際、“相手が “ プレスする ” という表現を口走った瞬間、 加工に関してはトーシロー(業界用語で素人の事)だという事がバレる ” という話を聞いた事もあります。

多くの会社が、圧入加工の本質を理解せず、 揃って “ プレスする ” とコピペしてしまった事。  これは日本工業会にとって一つの悲劇です。  クリンチング・ファスナーが使用された商品に関しては、 日本製の板金製品が、海外製品に品質面で負けるという、 信じられないような事が実際に発生してしまいました。

ところで、 “ あれ?翻訳? ” と思われる方も多いと思います。  翻訳という限りは、英語の原文が存在するわけです。  それは米国PEM社のカタログです。  そこには、各種ファスナーの加圧力が明記されていて、参考値ではありますが、 “ この圧力で加圧したら、この強度が得られます ”と書いてあります。  各社のカタログを作った人達は、 その部分に示されている事が、微妙な内容である事は解っていましたが、 力学の知識等や圧入技術の知識がありませんでした。  そこで、そこの部分も、しっかりコピペして安全策を取った訳です。  筆者は “ 皆、小保方さんのコピペを悪く言う資格はない ” と思います。  小保方さんは、少なくとも意味を理解してコピペしていたので少しはマシだけれど、 カタログの方は意味を理解せずにコピペしているものと思われます。

上記の理由から、現在 “ プレスする ” という表現を使ったカタログで販売されている クリンチング・ファスナー・メーカーは、 自分から圧入技術について何も考えていませんと言っているようなもので、 そういったメーカーを設計者の方は、圧入技術面で信用すべきでは無いでしょう。

“ プレスする ” と書いてあるカタログを見た板金屋さんの反応

流石に、多くの板金屋さんでは、そういうカタログを見た時、 “ プレスする ” という表現に チョッと素人っぽいぞ という気持ちは持っておられたようです。  板金屋さん達も加工の専門家と同じで “ プレスする ” という言葉は、 “ 自動車する ” とか “ 会社する ” とか “ 学校する ” とかと同じように聞こえるのです。  プレスによって行われる加工は沢山ありますので、 本当は “ プレスを用いた××加工を行う ”という表現が正しいのです。  具体的に××の部分に入るのは、普通は、曲げとか、せん断とか、張り出しとか、絞りです。

そんな中で、クリンチング・ファスナーには、 適切な加工を指す言葉を見つけるのが難しかった。  そこで、使われ始めた言葉が、 クリンチング・ファスナーと似た目的で使われ、 サイズも同じくらいのリベットで使われていた言葉“ かしめ ”です。

しかし“ かしめ ”という言葉は、クリンチング・ファスナーを板に取り付ける時の言葉として、 適切ではありません。 それは、リベットはリベットのヘッドが変形しますが、 クリンチング・ファスナーは、板側が変形し、ファスナー自体は全く変形しないからです。


力学的に正しい表現は、これ

この時点で、板金屋さんたちが、英語では Insertion ( 圧入 ) と言う言葉を使う事や、 “ かしめ ”は Caulking である事を知っていれば、 “ 圧入 ” という言葉だって連想出来たかも知れませんが、 板金屋さん達には、英語の文献を調べるような人はいなかったわけです。

力学的には、 材料力学ざいりょうりきがく塑性力学そせいりきがく という分野があって、 Insertion(圧入) と Caulking(かしめ) は違ったものだという 位置付けです。
 Insertion は板材の すえ込み 加工
 Caulking はリベットヘッドの へッディング加工
です。  学者さんに理解してもらう時には、このように説明すれば、直ぐに内容を理解してもらえます。  また、ネットなどを使って、この辺の加工技術を勉強したい場合にも、 “ へッディング ”や“ すえ込み ” といった言葉を知らなければ、検索することだって、ままなりません。

逆に、学者さんに “ クリンチング・ファスナーをカシメてます ” などと説明すると、 クリンチング・ファスナーが変形するのだと勘違いしてしまいます。  一般的には、学者さんに対して、現場用語を使って説明をしても、 通じないか、説教されるか、まぁ、そんなところです。


学者さんも驚く圧入技術

板金屋さんにおいて “ クリンチング・ファスナーの圧入は、板材のすえ込み加工です ” と塑性加工専門の学者さんに説明すると、 普通、学者さんは意外なそぶりを見せるでしょう。  普通の板金屋さんにおいて、板材の すえ込み が実行されているとは思っていないからです。  筆者は日本の 塑性加工そせいかこう の先生方は、 ほぼ全員、クリンチング・ファスナーというモノをご存知ないと思います。  クリンチング・ファスナーは、大分類の中では ねじの一種なので、 日本機械学会のテリトリーだと考えているからです。  実は、日本の研究者の弱点が、ここにあります。  日本の研究開発を海外と比較した時に、自分達のジャンルと他のジャンルの 境界 ( ニッチな分野 ) に位置するような研究開発においては、 日本は遅れているという事が指摘されて久しいのです。  クリンチング・ファスナーは、その典型的な例ですが、 未だ、学者さん達は、それに気付いておられないようです。  圧入技術を見た学者さんは、本当に板材の すえ込み なのかを確認しようとするはずです。  クリンチング・ファスナーは変形せず、板側が変形する図 を見て、 やっと “ 本当だ!こんな塑性加工をやってるとは思わなかった ” と言うでしょう。  何時も、先生方は次の研究テーマを考えておられるので、多くの学者さんが、かなり興味を持たれるはずです。

加工の内容自体は、学者さんは一発で理解し、コツなどを喋りはじめますが、 このホームページに記載されているように変形体積が微細であるという事に注目。  板厚変化とファスナー自体の寸法精度に大きく影響される加工であると気付いて、 研究テーマとして十分面白いと思われるはずです。  筆者は、例えば、クラッド鋼にクリンチング・ファスナーを圧入した時の板の塑性変形の研究は、 まだ誰も着手していない内容かと思います。  このような内容を説明すれば、学者さんの眼の色は変わるはずです。

板金屋さんは “ 学者なんか役に立たない ” と思っておられる方が実に多いのですが、 それは絶対に違います。  使っている言葉が違っているので言葉が通じていないだけです。  中途半端に言葉が通じる分、勘違いや誤解に結びつき易く、そんな会話を 聞いていると “ はちゃめちゃ ” になっている事もザラです。  何なら全部英語で話した方が、まだマシかも知れません。  両方の言葉を概ね理解できる筆者は、何時も強く、この事を感じます。  この件に関しては、両者共に勉強不足。 共に、もう少し歩み寄って頂きたく思います。

かしめと圧入と福沢諭吉

もしも、将来、JISにクリンチング・ファスナーについて記載されるとすれば、 リベットならば“ かしめ ”で良いですが、 クリンチング・ファスナーに関しては、 “ かしめ ”という言葉を使っている事が加工用語の使い方として正しくない事。  さらに、 位置制御のプレスでの圧入が邪道であるという点を明確に記載せねばなりません。  もし、そうならなければ、この分野で日本は世界に遅れを取ってしまいます。

何故、世界に遅れを取ってしまうのかと言うと、 世界では、Caulking (かしめ) と Insertion (圧入) が、 違う意味で使用されているからです。  これを、日本では、全部 “ かしめ ” というのでは、 一万円札の福沢諭吉に叱られてしまうでしょう。

福沢諭吉は、明治初期に、英語にはあっても日本語には無かった言葉、 例えば、自由/経済/共和国/人民 などの言葉を作りました。
それらの言葉の数は驚異的な数です。  いくら福沢諭吉が天才であったとしても 様々な事を考慮に入れねばならず、かなり苦労して作った事は間違いありません。  では、なぜ、福沢諭吉が、そんな苦労をしてまで英語に対応する 日本語を作る必要があったのかと言うと、

   『言葉がなければ、その分野が日本で発達しなくなる』
   『海外に遅れをとってしまう』
   『日本が一流の近代国家に成長できなくなってしまう』

という事を考えたからです。



つまり、福沢諭吉と同じ考え方に立てば、 Caulking (かしめ) と Insertion (圧入) を 使い分けする事ができるかどうかは、 日本の板金製品に“ねじ”を取り付ける工法が発達するかどうかを 大きく左右する事になるはずです。

プレスを使ってクリンチング・ファスナーを “ かしめる ”
という表現は間違いだらけです。
使う道具も加工技術も違っています。 

正しくは、
インサーションマシンを使いクリンチング・ファスナーを “ 圧入する ” です。
そうでなければ、クリンチング・ファスナーが接合強度不足の状態で、大量に製品に組み込まれてしまいます。


“プレス圧入する”とも書いてある

“ プレス圧入する ” と書いてあるクリンチング・ファスナーのカタログは一番多いかも知れません。  これらのメーカーさんも、他社のカタログからコピペをして作成しておられます。  普段から加工の事を勉強しておられない方が “ プレス圧入 ” という熟語があるかどうかをご存知なく “ こんな言葉もあるんだろうな? ” と想像して書き込んだのでしょう。 

筆者が述べる事が本当かどうかを知るために一番手っとり早い方法は、Googleで “ プレス圧入 ” という言葉が、 きちんとHitするかどうかを確認して頂けば良いでしょう。  検索結果は“ プレス圧入 ” は、探し当てる事が出来ず、“ プレス ”と“ 圧入 ”に分解し、 両方が出て来るホームページがリストアップされます。  この事実は “ プレス圧入 ” という言葉が、日本語として、ほぼ使われていない という事を示しています。  カタログを印刷する前に、多くの人が目を通しているはずですが、誰も気付かなかったのでしょうか?

“ プレス圧入 ” は、本当は “ プレス 圧入する ” と言いたかったのかも知れません。  そうなれば、これまで何度も述べたように、プレスでは加圧力を調整出来ないという事と、 こういったカタログの全てに記載されている、 各クリンチング・ファスナーの圧入力が指定されているという事が、 矛盾してしまいます。

これによって、 『圧入力指定の意味を理解していない』という事が、はっきりと解ってしまいます。 
つまり “ プレス圧入する ” と書いてあるカタログもまた “ プレスする ” と書いてあるカタログと 同じです。
ファスナー・メーカーの立場を考えても“ プレス ”という表現では、 設計者の皆さんに “ 圧入技術についてしっかりと考えた商品ではない ” と判断されてしまい、 ファスナーの売上も伸びなくなるでしょう。

筆者は、日本の工業技術の発展のために、
このような表現は、改めて頂くべだと考えます。
メーカーを問わず、 クリンチング・ファスナーのカタログから
“プレス”という文字は、全部消すべき
です。

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