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39.クリンチング・ファスナーのめっき

38. 板金屋30%廃業説

小規模な板金屋さんの歴史

現在、金属製品製造業を営んでおられる板金屋さんの多くは、 下記のような共通した社歴を持っておられます。

  @ 昭和30年代〜40年代に起業
  A 高度経済成長によって順調な成長
  B オイルショック ドルショックを企業努力で乗り切る
  C バブル期には順調な成長
  D バブル崩壊の中、企業努力で乗り切る
  E 長期不況+仕事の海外流出+金融不況も企業努力で乗り切る
  F リーマンショックも企業努力で乗り切る


過去、30年間で板金屋さんの数は著しく減少しました。 D〜Fの、過去30年の不況のせいです。  30年前の板金屋さんのリストを使って、そこに記載されている電話番号が 現在、使われているかどうかを調べた事があります。  勿論、引っ越して電話番号が替ったというケースも多いはずですが、 それでも、半数は使われていると思いましたが、 結果は、約1/10で、30年前の電話番号は、全く使えない事が解りました。  その後、色々な情報を集めて見ると、 板金屋さんの頭数は、半数か、それ以下になってしまっています。

特に、バブル崩壊以降、新しく起業した板金屋さんが もの凄く少なかったという点が重要で、 これを人口ピラミッドで例えるならば、完全な逆三角形となっていて、 それは、日本のいびつな人口ピラミッドの比ではありません。

昭和に起業し、生き残りに成功した板金屋さんには、 必ず生き残った理由があります。  これを大別すると、設備と努力という事になります。  大規模な設備を導入し、より大きな板金屋となって行った会社と、 それは出来ずに、少人数で社長自らの技術や人が嫌がるような仕事を 引き受ける事で生き延びて来た会社が沢山あります。

両者(設備か努力か)は、はっきりとした境目のないグレースケールですが、 設備投資によるNC化やコンピュータ化に成功した板金屋さんほど 営業的にも成功している確率が高くなります。


30年間もの間、努力に務め、今、燃え尽きようとしている板金屋さん

そのような中で、今から5年の間 に、 多くの板金屋さんにとって、どんなイベントが待っているかと言うと、 それは、社長の体力と精神力の限界が来る という事です。  既に、多くの板金屋さんの経営者の方は65歳を超えておられます。  そんな中、後継者がおられない会社は廃業しかありません。

では、どのくらいの数の板金屋さんが廃業して、 どういった規模の廃業ラッシュとなり、 大手企業や板金関係の設計をされている皆さんには、 どのような影響があるのでしょうか?

板金屋さんは、中小零細企業が多い事は述べる間でもありません。  5年以内に廃業するであろう板金屋さんは、 頭数では、板金屋さん全体の30%を確実に超えます。  これは、仕事で板金屋さんを巡回している営業マンならば、全員が認める内容です。  さらに言えば“いやいや、もっと多い!50%くらいだ” という営業マンもいます。

このような場合、社会的には、倒産件数という数字が現れてくる訳ですが、 現在、手形の流通量も少なくなっていますので、商売が続けられなくなっても、 倒産というハデな形態を取る事は少なくなりました。  金銭的に何処かに迷惑をかける訳でも無く、 会社は、解散という形態を取る事が出来ますので、 商売を辞めてしまった企業の数は、 倒産件数という数字には現れて来ません。  これによって、社会的な騒ぎになる事は少なくなっているわけですが、 しかし、会社が無くなるという点では、 大手企業(川下企業)から見れば、倒産も廃業も同じ事です。  マスコミ等が騒がない状況の中で、日本工業会にとって極めて不都合な事が水面下で起ころうとしています。

そういった板金屋さんは、売上も大きくは無いので 売上額で言えば市場規模の10%程度かも知れませんが、 頭数は多いので、影響を受ける大手企業(川下企業)も多いでしょう。  特に、そういった板金屋さんがやっていた仕事は、 機械化の難しい仕事である事が多く、製造ノーハウも多いはず。  本当は、無くなってしまうのが非常に惜しいという面も否めません。

また、大手企業の方には聞こえてこない発言かと思いますが、 中小零細の小さな板金屋さんの経営者の方から、 “ もう辞めたいんだよね ” という力の無い台詞が実際に、頻繁に聞こえて来ているのです。  あちらこちらから聞こえるようになって来た、この台詞を、 政治家の方や大手企業の経営者の方に重く捕えて欲しいと思うのは筆者だけでしょうか?


廃業ラッシュの影響

工業製品の全ては、部品の1つでも調達出来なければ 製品として成立しないわけですから、 何処かの板金屋さんが廃業した事によって、 部品が調達出来なくなるといった事は、どうしても避ける必要があります。

無論、一般的な工業製品における部品調達は、 1社からだけではなく、複数社からの調達が可能なように様々な工夫がされています。  こういった中で、一番注意せねばならないのは、 一見、複数の調達ルートがあるように見えても、 中間業者が違うだけで、生産できる工場は1つしか無いというパターンです。

ものづくりをやっている工場では “ 自分達にしか作れない ” という仕事に大きな “ こだわり ” を持っています。  なので、何十年もの時間をかけて、生産できる工場は1つしか無いというパターンを数多く作り続けて来たはずです。  これには、コストという面も大きく関係します。  つまり、××という部品を××円以下のコストで生産できるのは××製作所だけだというパターンは、 もの凄く多いものと思われます。  部品が仮に、複数社から購入できるとしても、 何倍もの費用を払えば調達出来るという内容ではダメなはずです。

大震災が来て、自動車部品の全てにおいて複数の調達ルートが確保されているものと思いきや 実は、1つの工場の震災被害によって、ある部品が、どうしても調達できなくなってしまった事がありましたが、 廃業ラッシュでは、これと同じ事が多発するでしょう。  東北大震災と言えども、地理的に集中したために、 日本の板金屋さん全体から考えれば1%以下の被害でしか無かったはずです。  しかし、廃業ラッシュでのダメージは、 東北大震災や九州地震で、使えなくなった工場の数の何倍〜何十倍もの数になる 事は確実です。  また、地震であれば、その多くは復旧するのでしょうが、廃業ラッシュに復旧は全く無い のです。  日本全体の最低でも10%の板金工場が被害を受けて、 その後、復旧も出来ないような震災など、とても考えられません。  つまり、廃業ラッシュは、日本のものづくりにとって、 大震災以上のダメージになる可能性が極めて高いのです。

これを “ それも自然淘汰というものだ ” と言われる方も多いかも知れませんが、 筆者は “ 自然淘汰の要素もありますが、それにしても影響範囲が大き過ぎます ”と申し上げたいと思います。 


いわば、 長期不況により新しい板金屋さんが、 あまり生まれて来なかった事によって、5年以内に 集中的な中小零細板金屋の絶滅時期を迎える という事です。  これを“政治的な失策だ!”という方も大勢いらっしゃいますが、どの総理大臣が悪かったという訳でも無く、 言うなれば全員が少しずつ悪かったのです。  不運な巡りあわせという他は無いでしょう。

この状況は、昭和時代にテレビチャンネルが増えて テレビタレントが大量に増たものが、今は皆年配になり、 そのうち、テレビタレントの訃報が大量に流れる時代になるのと同じパターンです。  タレントの場合は、大御所が仕事を独占した事と、チャンネルが増えなかった事により、 若手があまり生まれてこなかったわけですが、 結果的に板金屋さんの状況と酷似しており、 こちらも、誰が悪いという事もなく、そういった巡り合わせになってしまっただけです。



廃業ラッシュの対策

廃業ラッシュによって、失われるものは簡単には戻ってきませんが、 古代から続く日本の歴史が証明しているように、 日本の将来も、やはり『ものづくり』にかかっているはずです。

廃業ラッシュは、震災のように予測出来ないものが突如として襲ってくるのではなく、 少しずつ、しかし確実にやって来ますので、 大手企業の購買担当の方や、設計者の方は対応策を考える時間があります。
廃業ラッシュに備えて、現段階で対応策を実施するのであれば、 まずは、任意の部品を××円以下のコストで生産できるのは××製作所だけだというパターンが どの程度あるのかを調べる 必要があるはずです。

念のために申し上げておきますが、 そんな板金屋さんに対して、間違っても “まずいんだよね” “迷惑なんだよね”などと発言してはいけません。
こういった場合、××製作所が過去に行って来た企業努力を再評価し、 まず、感謝状の一通も贈るのが当り前 であるように思います。  そして、努力と功績は十分認めた後、 調達不能になるリスクを回避するために、 どうすべきかを考え、あくまで対等な取引 として互いに協力し合うべきです。  どう頑張っても他の企業から調達できないのであれば、その部品に関しては、 カンバン方式は、その前提において瓦解した事になるわけですから、 例外を認め、大量に購入し在庫に持っておくべきでしょう。

また、後継者がおられるにも関わらず、 設備投資が後手を踏んでいるような板金屋さんがあった場合は、 そこにある技術が失われる寸前なのかも知れません。  勿論、技術の内容次第ではありますが、 あらゆる支援を行い、保護して行かなければならない場合があるはずです。  これは、生物界の絶滅危惧種を保護する事にも近いのかも知れません。

上記に述べた事は、 現在、日本の政府が、ものづくり補助金を初めとする、 数々の“ものづくり企業”に対する支援を国策として実施している理由でもあります。  板金屋さんに限定して述べるのであれば、 一般的には、大手企業に翻弄され過ぎる事が最大要因かとは思いますが、 板金屋さん自身の努力不足の感も否めません。

板金屋さんに望まれる努力とは、 ITリテラシー(パソコンやNC操作能力) を高める事や、書類作成能力 を高める事です。  これらは多くの板金屋さんにおいて、過去に、ベテランの板金の技能者や事務職の方が、 後輩を育成する時、自分達も得意では無い内容であるために、避けて来た職業能力です。  現在、そのツケが回って来ている事に、気付いておられない、 もしくは、目を背けようとする板金屋さんが多い事には驚かされます。  例えば、現在、板金屋さんが苦労されている
含有化学物質調査依頼 などは、 その例です。 この種の情報処理は、今後、どんどん増加するはずです。  そこのところの考え方を変化させる事が出来ない中小零細企業の場合は、これこそ自然淘汰。  残念ながら明日は無いものと考えます。

多くの設計者の方は、これまで仕事の上で協力してくれた 板金屋さん達とは、今後も共存と発展を望まれているものと思いますので、 5年以内に板金屋さんが半数近くまで減少してしまう事は無視できない事であるはず。  多くの板金屋さんの現在の事情と将来のこのような事情について、 一度、考察される事を望みます。



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