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41.クリンチング・ファスナーの小分け販売

43.“プレスする”と書いてあるカタログ

42.クリンチング・ファスナー各社品番コードの対応表

クリンチング・ファスナーを発売しているメーカーは、国内約10社に及びます。 ところが、各社が同じ品番コードを用いるはずもなく、各社は複雑な対応表を作成し、 ×社の×をお使いでしたら、弊社の×が対応しますので、お安くしておきますが如何でしょうか? という営業活動を日夜行っています。

このホームページには、多くの皆さんが、その対応表を公開して欲しいと望まれる事でしょう。
実は、筆者の手元には、全てのクリンチング・ファスナー・メーカーが発売している 全品番の巨大な対応表があります。  一部だけでも公開してはどうか? という考えも脳裏を霞めましたが、 結論から言いますと、残念ながら 対応表の公開は絶対に行うべきでは無い というのが結論です。

その理由を理解する事は、現在の日本におけるクリンチング・ファスナーの業界事情を理解する事に繋がります。  各社品番コードの対応表には、下記に示す大きな問題点があります。

各社独自の設計寸法の持つ危険性

各社の製品は、同じ寸法に見えても圧入に関わる部分の細かな寸法は全く異なります。  もっと、はっきり言いますと、同じなのは、ねじ径と全長だけです。

ファスナー全体が同じ寸法になるような規格も存在しません。  クリンチング・ファスナーは、まだ、技術的に発展途上のアイテムなのでJIS等で規定するのも時期尚早です。  この点は、通常の“ねじ”とは全く異なる状況ですが、板金屋さんのほとんどが、それを、勘違いされています。

クリンチング・ファスナーの圧入は、一方では、板厚が0.01mm程度変化した場合や、 各部位の寸法工差も、圧入精度に大きく関係するという微妙な加工技術です。  メーカーを替えると、 よほど運が良くない限り、これまでと同じ圧入方法(ツールを含む)できちんと圧入できるはずがありません。  対応表は、あくまで似ているファスナーの対応表に過ぎません。

対応表を提示してしまえば、こういった事をご存知無い 板金屋さんが、設計者さんの知らないところで、無制限に 転注てんちゅう ( 発注先を替える ) を行う事になってしまいます。

設計者の皆さんが、過去に設計した製品の中で、当時、様々な検討をしてファスナー・メーカーを決定した事であるにも関わらず、 板金屋さんが勝手に違ったメーカーから仕入れてしまっているケースが頻繁に発生しています。  気になる設計者の方は、お調べになるべきです。


設計者の意図に反するサプライヤー変更が容易に可能になる

ほとんどの板金屋さんが、対応表が欲しいというお考えですが、 対応表を手に入れた多くの板金屋では、 下記のような物語が発生するでしょう。

1■ まずは、値引き交渉

まず、板金屋さんは、対応表を現在ファスナーを買っているメーカーの営業マンに見せて
  “この表の何処からでも買えるので値引きして”
と要求するでしょう。
これまでよりも随分と安くなった新しい見積を入手した板金屋さんは、次に、 他のメーカーの営業マンを呼んで、その見積書を見せ、
  “これより安くしてくれたら買ってやる”
と言うでしょう。
何社も買える会社が解ってしまうわけですから、これを何度も繰り返せば、 究極の安値の見積書が手に入る 事になります。  ファスナー・メーカーから見れば“鬼”のような購買テクニックですが、 対応表が欲しいとお考えになっている理由は、このパターンの購買活動を行いたいからだと思います。


但し、“ さぞ大きな金額のコストダウンが可能なんだろうなぁ ” とお考えであろうかと思いますが、 ここで可能となるコストダウンは、ファスナー・メーカーがいくら頑張っても大した額にはなりません。  既に、クリンチング・ファスナーの価格競争は10年以上続いていて、 ビックカメラとヨドバシカメラの価格競争と同じ状態 になっているのです。  例えば、板金屋さんにおけるクリンチング・ファスナーの平均的な月当たりの購入価格は、 約10万円ですが、これを 5千円下げる事が出来れば万々歳 です。  普通は、2〜3千円といったところでしょう。  ですが、この程度のコストダウンは、焼け石に水の効果もなく、実際は、火に油を注ぐようなものです。  人を巻き込んでミーティング等を行うと、数年分のコストダウン費用も 水の泡となります。 ISO関係の書類も沢山書き換えなければならなくなります。  さらに発注時には図面と違った品番に置き換えて発注せねばならなくなる点。  勘違いが発生しトラブルを誘発する点などを考え合わせれば、ド赤字です。
しかし、 最も大きな赤字要因は、これらではなく下記に示す内容です。

2■ それを設計者に報告したらこうなる

しかし、クリンチング・ファスナーにおいては、一般的な“ねじ”等とは違い、 この行為は、設計者を無視した行為となります。
上記の報告を受けた設計者は、誰だって
“その転注によって不具合が発生したらどうするの?”
と言います。 
これを言われて、少し怖くなった板金屋さんが共通してファスナー・メーカーに言う台詞は
“不具合の責任はお前のところに取ってもらう”
です。
ファスナー・メーカーは、 既に、利益なんか全く無い状態にされてしまっている訳ですから、 ここまで行けば“カツ上げ”みたいなものです。
しかし、この時点でファスナーの営業マンは、転注してもらえそうだという事を、 会社に報告していますので、理不尽は強く感じるものの、既に、引っ込みは付かなくなってしまっています。  そして、建設的に “ これを上手く調整するのが自分の仕事だ ” と考えます。

3■ ファスナー営業マンの対応

こんな展開になったファスナー・メーカーの営業マンは、 “それは見積の条件に入っておりませんので再見積させて頂きます”と言えばよろしいはずですが、 この時点でお茶を濁す事は出来ないと考えます。  不具合が発生しなければ良い事なので、希望的結果になる事を祈って“Yes”と、 言ったような、言わなかったような、そんな曖昧な答えを板金屋さんに返します。 

新規の顧客をGETして喜んだ営業マンは、 圧入不具合が発生するかどうかも少しは考えますが、他の何百何千という会社でも 使われているファスナーなので“ この会社に限って不具合が発生したりはしないはず ”と考えてしまいます。  しかし、これはまさに素人考えです。 本当は、その会社が、これまで使用して来たままの圧入環境で、 不具合が発生するかどうかを考えねばならない のですが、自分の営業成績に目がくらみ、それに気付く事はありません。

4■ 設計者のリスク

こうなってしまうと設計者にとっては、その後、凄く危険な展開となるでしょう。
設計者の方は、その後、板金屋さんが、
“転注による不具合責任は、全部ファスナー・メーカーが引き受ける事になりました”
等と報告して来た時には、“ こりゃぁ、何か変だ!? ” と気付くべきです。

少し考えれば誰でも解る事かと思いますが、 そもそも、不具合責任を全部ファスナー・メーカーに引き受けさせる事など出来ない上、 ファスナー・メーカーは、他社ファスナーの仕様や、 板金屋さんにおける圧入方式を、きちんと把握する事など出来るわけがないのです。 

つまり、
“転注による不具合責任は、全部ファスナー・メーカーが引き受ける事になりました”
という台詞は、全く根拠の無い台詞なのであって、彼らは勿論、進んで責任を取ろうとはしません。

5■ 悲しい物語の顛末

この悲しい物語の顛末は下記のようなものです。
転注されたファスナーの種類が多ければ多いほど、 予定通りトラブルが発生します。  実際に、メーカーを変更した場合には、半数以上でトラブルが発生していますが、 発見されるのは、ファスナーが外れた等の派手なトラブルだけです。  細かく見れば、転注を行えば、その全部でトラブルが発生しており、 これは、時限爆弾となっていて半年、一年後に現象が現れるのです。

ちょっと表現がオーバーかも知れませんが、 本来であれば、トラブルが発生すれば、落とし前を付けるのが、 この世界の仁義なわけですが、 関係者間では、責任転嫁の応酬 となり、 醜い“仁義なき戦い”が始まります。

ファスナー・メーカーは、間違いなく
“ 他のお客では発生していない事です ”
と言い、
板金屋さんは、ファスナー・メーカーに
“ 責任を負うと言ったじゃないか? ”
と言うでしょう。 
こういったトラブルは、毎日何処かの板金屋さんで発生しています。 

板金屋さんは “ 転注に関しては設計に報告してあります ” とも言いますので、
結果的に、設計者が大変大きなリスクを負う事になります。 

まずは、設計者の方には、板金屋さんに対して不用意に発言した内容や、 あやふやな発言をした時に、それが、板金屋さんを介して、 下請け企業にどのように伝わるのかを、 難しい事ではあるでしょうが出来る限り考えて頂きたいと思います。

また、筆者が、何故このように具体的なシナリオを詳細に述べる事が出来るのかと言うと、 現実に、同種の事があちらこちらで発生しているからです。  これを読んで頂いている設計者の方の中にも近日中に同種の事を経験される方が必ずおられます。

6■ 設計者が行うべき対策

設計者の方のために申し上げますと、 クリンチング・ファスナーの転注は、自ら進んでドツボにはまりに行くようなものです。  現状のメーカーに何らかの不満がある場合は別ですが、 現状で上手くいっている クリンチング・ファスナーのメーカーを転注する事などありえませんし、 ここまで大きなリスクを犯して実行せねばならないコストダウンもありえません。 
設計者が、このようなトラブルを回避するための方法は1つ。

“ 不具合の危険性が高い転注など、もってのほか! ”

と、はっきり と言うしかありません。


対応表には記載されていても、在庫に持っていない場合が多々ある。

対応表は、各ファスナー・メーカーが協議して作成されたものではなく、 自然発生的に作成されたものです。  例えば、長さ27mmのファスナーなどは、特定のメーカーだけしか、 在庫に持っていないようなモノですが、対応表上では、 あたかも、何処でも持っているかのように記載されてしまいます。

従って、対応表は、あくまでコードの対応に過ぎず、 各社が在庫に持っているかどうかは、別の問題なのです。 また、在庫に持っているかどうかという情報を各社から得る事は全く不可能。  産業スパイに金を払っても、お取り寄せ不可能な情報であるだけでなく、 在庫に持っているかどうか自体が日々刻々と変化します。

対応表があっても、多くの場合は
使えねぇ〜 ” という話になります。


クリンチング・ファスナーの圧入技術が軽視される事に繋がる

対応表が公表されるという事は、 ファスナー・メーカーの転注が可能であるという事を認める事に繋がります。  これは、圧入技術が軽く見られるという事です。  圧入技術はファスナー・メーカーよって、あまりにも差があります。  これは、天と地の差と言ってもよろしい状況です。  “プレスでも圧入出来ると聞いています ” などという噂が、ここまで広まるという事は、 圧入技術ゼロのメーカーが多数存在するという事です。

クリンチング・ファスナーを、普通のねじ類と同じようなものとして考えるのであれば、 圧入技術を無視してもかまわないところです。 しかし、現実は、何度も述べて恐縮ですが、 板金屋さんにおいて実施される塑性加工(曲げ、抜き、絞りなど)の中で、 クリンチング・ファスナーの圧入時に発生する変形部位は、最も小さな体積であり、 発生する歪みは逆に最も大きいのです。  つまり、クリンチング・ファスナーの圧入は、板金屋さんでの塑性加工の中で、 最も管理が難しい加工 であると言っても差支えありません。 

そのような加工(圧入)を行うにも関わらず、 圧入技術を無視して安いものがあったら、ろくに検証もせず飛び付くというのは、 それは加工を理解していないという事です。


これらの事を考慮に入れると、 このホームページで対応表を公開する事は、簡単に出来てしまいますが、 高い確率でファスナーの圧入不具合を誘発する事となる上、 圧入技術が軽視され、板金屋さんにおける圧入技術に関する誤解にも結びついてしまいます。  これでは、設計者の皆さんや、板金屋さんのためになりません。 

もしも、板金屋さんが間違って設計者に対し

“こんな対応表もあるくらいなので、安心してメーカーを替えましょう”

などと発言されてしまっては悲劇であり、このホームページのコンセプトとは真逆になってしまいます。
そもそも、
クリンチング・ファスナーにおいて価格だけで勝負して売上を伸ばそう等という考えが、 間違っている のです。  これは、全てのクリンチング・ファスナー・メーカーに対して共通して言える事です。  何故ならば、クリンチング・ファスナーと、その圧入技術は発展途上の状態にあり、 その為に、JISにもその内容は掲載されておりません。  競うべきは価格などではなく圧入技術および圧入システムなのです。  でなければ、市場そのものが育たなくなるでしょう。

日本独自のクリンチング・ファスナーや、 日本独自の高度なインサーション・システムが生まれて来る事を筆者は望みます。  しかし、多くの技術で日本は世界一ですが、 ここいらの技術に限っては、残念ながら日本より世界的市場を持つアメリカの方が圧倒的に上です。  なぜ、そんな事になってしまったのかは、
4.クリンチング・ファスナーのあゆみ(歴史) で既に説明させて頂きました。  日本の設計者や板金屋さんは、残念ながら、圧入技術を理解出来ていないというのが実情です。

少しでもそのギャップを埋めたいという気持ちから、 このホームページでは、クリンチング・ファスナーの情報公開を行って来ました。  また、各社品番コードの対応表の公開に関しての強いご要望がある事も存じ上げております。
しかし、クリンチング・ファスナー全体の将来を考え、 上記の理由により、あえて、公開すべきでは無いと判断させて頂きますので、 ご理解の程、よろしくお願い申し上げます。


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